Web制作やDX支援の営業現場で、「これだけ準備したのに、なぜ決まらないんだろう」と感じた経験はないでしょうか。ヒアリングも丁寧にやった、課題も整理した、競合分析も入れた、見積も妥当――それでも、最後の一押しで他社に持っていかれてしまう。

実はクライアントは、提案書の中身そのものよりも、もっと別のところを見ています。本記事では、Web制作・DX支援の受注プロセスで 「ロジック」と「感情」がどう交差しているのか、なぜ “正しい提案” だけでは届かないのかを、現場での観察をもとに整理しておきたいと思います。営業テクニックの話というより、「相手をどう見るか」のスタンスに近い話です。

なぜ「正しい提案」だけでは受注できないのか

多くの制作会社やフリーランスは、「ちゃんとヒアリングし、課題を整理し、見積も妥当に出した」=「受注できるはず」と無意識に思っています。けれども、実際の現場で起きていることは、もう少し複雑です。“論理” と “感情” は、別軸で動いています。

経営者や担当者は、提案内容の正しさと同じくらい、いやそれ以上に、次のような感覚を見ています。

  • この人と進めたら、安心できそうか
  • ちゃんと理解してくれているか
  • 話していて疲れないか
  • 質問しても否定されないか
  • トラブルが起きたとき、寄り添ってくれそうか

つまり、提案の中身に入る前に、相手はすでに 「この人と仕事をしたときの未来の感情」 を無意識に想像しています。ここを見落としたまま、どれだけ綺麗な資料を作っても、最終局面で他社に流れていく、ということが起きやすくなります。

クライアントが本当に買っているもの — 「制作物」ではなく「安心」と「伴走」

Web制作やDX支援は、商品を一度買って終わり、という性質のものではありません。ローンチ後の修正、運用フェーズ、社内調整、トラブル対応――プロジェクトを終えるまで含めて、長期間にわたって人と関わり続ける契約です。

だからクライアントの選定基準も、いわゆる “スペック比較” だけでは決まりません。実際にチェックされているのは、こういった部分です。

  • 相談したいときに、相談しやすいか
  • レスポンスが雑になっていないか
  • 専門用語で圧をかけてこないか
  • うちの会社の温度感を理解してくれそうか
  • 一緒に考えてくれる姿勢があるか

結局、探しているのは「サイトを作れる会社」ではなく、「このプロジェクトを一緒に進められる人」です。

そのため、皮肉なことに、いわゆる “営業っぽい人”・知識でマウントを取るタイプ・正論で詰めるタイプは、失注しやすくなります。逆に、”営業っぽくない人”・話しやすい人・ちゃんと聞いてくれる人のほうが、結果的に強い。これは多くの現場で観察できる傾向です。

受注率が高い人が無意識にやっている「感情設計」

ここでいう “感情設計” とは、相手がどんな気持ちで打ち合わせを終え、どんな気持ちでプロジェクトを進めることになるか、を意識して場をデザインすることです。受注率が高い人は、これをほぼ無意識にやっています。

具体的には、次のような所作です。

  • 最初に相手の不安を取り除く
  • 専門用語を日本語に翻訳しながら話す
  • 「わからない」と言いやすい雰囲気を作る
  • 否定から入らない
  • 相手の社内事情・人間関係まで理解しようとする
  • “正論” よりも “安心感” を優先する
  • 相手の温度感に合わせて、自分のテンションを調整する

これらは営業テクニックというより、「相手の感情を観察している」に近い行為です。逆に、提案資料の完成度ばかりに力が入っているチームは、この部分がすっぽり抜けていることがあります。「資料はいいのに、なぜか決まらない」のサインです。

価格競争になる会社/ならない会社の違い

価格競争に巻き込まれている会社の多くは、機能や仕様で比較されている状態にあります。「○○もできる」「△△にも対応」と並べた瞬間、隣にもっと安い同等の選択肢が並び始めます。

一方で、価格競争にならない会社は、機能ではなく “人” で選ばれている状態に持ち込めています。最後は「好き嫌い」に近い領域で勝負しているわけです。

「この会社のほうが少し高いけど、なんか安心する」――これは現場でよく耳にする発注理由です。理屈ではないように見えて、実は最も合理的な判断だったりします。Web制作は完成したら終わりではなく、修正・認識違い・トラブル・運用・社内調整が必ず発生するので、「問題が起きた未来」に向き合ってくれそうかどうかを、クライアントは無意識に評価しています。

つまりクライアントが選んでいるのは、納品物のスペックではなく “プロジェクトが進む数か月後の自分の心理的安全” だったりします。これが見えていないと、永遠に「価格で殴り合う土俵」から抜けられません。

これからのWeb制作・DX支援で必要になるもの — 「理解力」という競合優位性

制作スキルや AI 活用は、これから数年でますますコモディティ化していきます。一定の品質であれば、誰でも・どこでも作れる時代に近づいている、ということです。”作れること” そのものの価値は、相対的に下がっていきます。

その時に、最後まで価値として残るのは、「この人、うちのことを本気で理解しようとしてくれているな」と感じてもらえる関係性そのものだと考えています。

  • 言葉になっていない不安を拾える
  • 相手の立場を想像できる
  • 経営側の孤独を理解できる
  • 担当者のプレッシャーを理解できる
  • 「作る」ではなく「伴走する」スタンスでいられる

この力がある会社や個人は、単価競争にも巻き込まれにくくなります。結局のところ、Web制作は “人間関係ビジネス” としての側面が大きく、最後は「この人と仕事をしたい」と思ってもらえるかどうかが、すべての土台になります。

アイビーデザインがWeb制作で大切にしていること

アイビーデザイン合同会社(I BE DESIGN LLC.)は、Web制作・デザイン設計・システム導入支援・マーケティング支援を、“納品して終わり” にしないスタンスで続けている会社です。

短期の制作スプリントだけでなく、その先の運用・改善・社内の意思決定までを含めて、お客様と一緒に考え続けることを大切にしています。本記事で書いた「感情設計」や「伴走の感覚」を、価格表よりも先に共有することを意識しているのが、私たちのスタンスです。

「次のリニューアル、誰と組むかをまず話し合いから始めたい」「自社のサイト・運用体制を一度棚卸ししたい」――そういった抽象度の高いフェーズからのご相談も歓迎しています。

また、受注率に課題を抱えておられる事業会社様、制作会社様のご相談も承っております。提案・商談同席のみからでも、お気軽にご相談ください。